夏場や高温多湿な場所での作業は、汗をかくだけでなく体力的にも負担がかかります。「空調服・ファン付き作業着」は、エアコンが使えないような場所でも涼しく過ごせるアイテムです。この記事では、暑い時期でも快適に過ごしたい人に向けて、空調服・ファン付き作業着の特徴や仕組み、インナーの選び方について解説します。現場作業をする人や、アウトドアが趣味の人は参考にしてください。

空調服・ファン付き作業着とは？

空調服・ファン付き作業着とは小さいファンがついた服のことです。ファンによって服の中に空気を流し、汗を気化させて涼しくします。工事現場や屋外での作業、さらにはアウトドアなどでも利用できます。また、ジャケットタイプやつなぎタイプ、半袖タイプ、ベストタイプ、パンツタイプなど種類も豊富です。空調服・ファン付き作業着だけでも涼しくなりますが、インナーと合わせることでより高い効果を発揮します。

半袖タイプの特徴

半袖タイプの空調服・ファン付き作業着は、手元がすっきりしている分、細かい作業に向いているのが特徴です。半袖であっても着用時の快適さに変わりはなく、風の出口になっている二の腕回りや首回りなどは特に快適です。仕事現場だけでなく、スポーツやアウトドアのシーンでも使いやすいでしょう。一方で、火を扱うような長袖の着用義務がある現場では使えないこともあります。

長袖タイプの特徴

長袖タイプの空調服・ファン付き作業着は、工事現場や火を扱う場所で腕を保護してくれます。また、直射日光を遮ってくれるので、屋外での日焼け対策にも有効です。屋内で利用する場合も、首回りや袖口に空気が抜けて涼しさを感じられます。服の中を風が通るとふくらんでしまうため、細かい作業をするときに気になることもあります。また、火を扱う場合は綿100%素材の空調服・ファン付き作業着を選ぶようにしましょう。

ベストタイプの特徴

ベストタイプはアウトドアやガーデニング、DIYといったシーンに向いています。近年では作業現場でもベストタイプが人気です。袖がないので半袖タイプよりもさらに動きやすく、長袖タイプのようにふくれてしまう心配もありません。長袖・半袖タイプに比べて値段も安く、手軽に着用できます。インナーと組み合わせてコーディネートしやすいのも人気の要因です。

空調服・ファン付き作業着のインナー「コンプレッション」とは

空調服・ファン付き作業着を着る際、一緒に「コンプレッション」を着用することがあります。コンプレッションとは英語の「圧縮」や「圧搾」を語源としているインナーのことです。コンプレッションを使用することで、体に圧がかかり血流を促してくれる作用があります。体の負担を軽くしてくれるためスポーツ選手などが着用することが多いですが、現場作業をする人が空調服・ファン付き作業着の下に着用することもあります。

最近では消臭機能の付いたコンプレッションが注目されています。空調服・ファン付き作業着で風を送るとニオイが上がってくるため、体臭や汗が気になる人におすすめです。コンプレッションの素材の多くは、ポリエステルやナイロンとポリウレタンを混ぜたものとなります。素材の編み方次第で、吸水性と速乾性に優れた生地になります。

空調服・ファン付き作業着の仕組み

空調服・ファン付き作業着には、背中や脇の部分などに2～4個の小型ファンが取り付けられています。ファンには専用のバッテリーが付いており、スイッチを入れて服の中に風を送り込みます。体と服のすき間に風が送られて汗が乾くことで、気化熱が発生して涼しさを感じます。服の中の暑い空気は、袖や襟元から服の外へ排出されます。

なぜ空調服・ファン付き作業着で体感温度が変わるのか？

空調服・ファン付き作業着によって涼しさを感じられますが、そもそもなぜ涼しくなるのでしょうか？　ここでは、空調服・ファン付き作業着で体感温度が変わる理由について解説します。

涼しくなる理由

液体が気体に変わる際に吸収する熱のことを「気化熱」といいます。人の体は、汗が蒸発する際に発生する気化熱を活用することで体温をコントロールしています。気化熱による体温調節は、快適に過ごせる体温を保つ働きがあり、「生理クーラー」とも呼ばれています。空調服・ファン付き作業着は人工的に風を送ることで、生理クーラーを効かせています。

普段着では汗の量に対して蒸発が追いつかないため、涼しさも感じにくくなります。空調服・ファン付き作業着を着ることで、体が求める最適な体温を維持することが可能になります。

涼しくならない理由

汗をかいていなければ気化熱が発生しないため、空調服・ファン付き作業着を使っても涼しくはなりません。空調服・ファン付き作業着とインナーの相性が悪くて、汗がうまく乾いていない可能性も考えられます。この場合はしっかりと水分補給をして汗をかき、インナーは通気性がよいものと取り替えることで改善するでしょう。

空調服・ファン付き作業着の密封性も涼しくならない理由のひとつです。空調服・ファン付き作業着のすき間が多いと空気が循環しないため、生理クーラーが機能しません。または、ファンやバッテリーが劣化している可能性もあります。

空調服・ファン付き作業着のメリット

ここでは空調服・ファン付き作業着を着用するメリットについて解説します。

快適な身体状況を維持してくれる

空調服・ファン付き作業着を着用することで、涼しさが感じられるため、作業や仕事などをするのに快適な状態を作り出すことができます。涼しさといっても寒すぎることはありません。必要以上に汗をかかなくて済むので体力の消耗を防げます。また、汗の臭いや雑菌の繁殖も抑えられるため、あせもやかぶれといった肌トラブルも軽減できます。

作業効率が改善される

汗をかくくらい暑い場所で作業をする場合、適度に体を冷やさないと熱中症になる恐れがあります。そのため定期的な休憩が必要となりますが、空調服・ファン付き作業着を着ることで連続して作業を続けることができます。30分毎に休憩をはさんでいた現場へ空調服・ファン付き作業着を導入すれば、1時間、2時間と連続して作業ができるようになります。

コストや環境に効果がある

空調服・ファン付き作業着は屋外はもちろん屋内でも利用可能です。屋内で着用すれば、冷房の設定温度を下げる必要がないので、電気代の削減に繋がります。冷房を使用すると都市部では夏場の気温が40度を超えることもありますが、使用を控えることで消費電力を抑えられる可能性があります。空調服・ファン付き作業着は充電が必要ですが、充電にかかる電気代は1ヶ月で40円?50円程度です。

空調服・ファン付き作業着のデメリット

ここでは空調服・ファン付き作業着のデメリットについて解説します。

服がふくらむので引っかけやすい

長袖タイプは空気を流すことによって服がふくらむことがあります。ふくらむと、狭い場所での作業や細かい作業を行う際に邪魔になる可能性があります。また、鋭い突起物に触れると服が破けてしまう恐れもあります。また、スポーツ観戦やライブ会場などでは、ふくらんだ服だと人の目が気になるかもしれません。

ファンの見た目や音が気になる

空調服・ファン付き作業着のファンは腰や脇に付いており、外から見てもわかる状態です。しかし、ファンをふさいでしまうと空気が流れなくなってしまいます。また、ファンの音は基本的には大きくありませんが、1?2メートルくらいの距離なら聞こえるでしょう。作業現場やスポーツ観戦のようなにぎやかな場所ならよいですが、電車の中や会議室など静かな場所では気になるかもしれません。

デザインやカラーの種類が少ない

空調服・ファン付き作業着は普段着と比べると、デザインやカラーの種類があまり豊富ではありません。似通ったデザインやカラーが多いので、個性を出したい人にとっては物足りなさを感じるかもしれません。ただし、最近では空調服・ファン付き作業着の需要の高まりもあり、各メーカーが空調服・ファン付き作業着を作り始めています。今後はさまざまなデザインやカラーが増えていくことでしょう。

空調服・ファン付き作業着とインナーの選び方

ここでは、空調服・ファン付き作業着とインナーの選び方を3つ紹介します。実際に空調服・ファン付き作業着を導入する際の参考にしてください。

素材で選ぶ

綿素材のものは、肌触りがいいので着心地がよく、火気に強いので火を扱う現場などに向いています。ポリエステル素材のものは、価格が抑えられているほか、吸水性が低く乾きやすいという特徴があります。綿とポリエステルが混ざったものは、着心地の良さと耐久性の両方を兼ね備えています。インナーは接触冷感素材を使っているものや、吸汗速乾加工が施してあるものなどがあります。

形で選ぶ

長袖はスタンダードなタイプで、半袖は動きやすさを備えています。ベストは着心地が軽く、風が流れてもふくらみが目立たないという特徴があります。パンツタイプの空調服・ファン付き作業着やコンプレッションなどのインナーとの組み合わせ次第で、おしゃれに着こなせます。ただし、業務用に着用する場合は現場のルールに従うようにしましょう。

サイズで選ぶ

空調服・ファン付き作業着を選ぶときは普段着よりも1サイズ上を選びましょう。空調服・ファン付き作業着は服と体の間に空気の通り道を確保することが大切です。ジャストサイズだと空気が通るスペースが狭くなり、涼しくなりにくくなる恐れがあります。機能面よりも見た目を重視したい場合は、普段着と同じサイズでもいいでしょう。インナーに関しては、体にぴったりと合ったサイズのものを選んでかまいません。

まとめ

空調服・ファン付き作業着は気化熱を活用して涼しい状態を作り出す便利な服です。近年では工事現場や作業場だけでなく、アウトドアやスポーツ、DIYのシーンでも活用できると注目を集めています。形状や素材、インナーもさまざまな種類があるので、用途やファッションにあわせて選んでみてください。

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