新規格のフルハーネス(安全帯)とは?必要な場面や旧規格との違い

高所の建設作業では、安全帯の着用が必要です。2021年1月2日以降は、改正された労働安全衛生法の経過措置が終わり、旧規格の安全帯は一部使用できなくなっています。この記事では、新規格のフルハーネス型安全帯の概要や、必要となる場面について解説します。
「墜落制止用器具」の改正とは?
2021年1月2日以降、一部の安全帯は使用できなくなり、代わりに「墜落制止用器具」を使用する必要があります。
従来の胴ベルト型安全帯では墜落時の衝撃を十分に緩和できず、重大な労働災害が発生していました。事故の調査結果から、墜落時の安全性を向上させる必要性が指摘され、2019年2月1日、労働安全衛生法の当該部分の改正に至りました。
墜落時の衝撃を全身に分散し、作業者の安全性を高めること、また、労働災害を減少させ、安全な作業環境を確保することが本改正の目的です。名称も「安全帯」から「墜落制止用器具」に変更。2019年2月1日、新規格のフルハーネス型墜落制止用器具の使用義務化が決定しました。
2021年1月1日までは移行期間となり、旧規格の安全帯も使用可能でした。2021年1月2日からは、新規格の墜落制止用器具の使用が完全義務化されています。旧規格の胴ベルト型安全帯(U字つり)は、墜落姿勢使用器具としては認められていません。なお、胴ベルト型(一本つり)、ハーネス型(一本つり)の安全帯は、2021年1月2日移行も墜落制止用器具として認められていますが、フルハーネス型を使用することが原則とされています。
新規格のフルハーネス(安全帯)が必要な場面とは?
フルハーネスの墜落制止用器具は、以下のような場面で必要となります。
作業の高さが6.75メートルを超える場合
6.75メートル超の場所で作業を行う場合は、フルハーネス型を着用するのが原則です。ただし、作業内容によっては、6.75メートル以下の作業でもフルハーネス型の着用が推奨されています。
作業床がない、または手すりなどの墜落防止設備が設置できない場合
作業床がない環境、手すりなど墜落防止設備が設置できない環境(2メートル以上)では、フルハーネス型の使用が原則です。作業床の端や開口部での作業もフルハーネス型の使用が原則とされています。墜落制止用器具使用のガイドラインでは、高さ2メートル以上の場所で作業を行う場合、作業床や手すりなどを設置することが原則とされています。
建設業や特定の業種で推奨されている場合
建設業では、5メートル以上の作業でフルハーネス型の着用が推奨されています。また、2メートル以上で柱上作業等を行う際も、フルハーネス型の着用が推奨されます。
U字つり用胴ベルトを使用する場合のバックアップとして
旧規格の胴ベルト型(U字つり)は、墜落制止用器具としては認められておらず、単体では使用できません。胴ベルト型(U字つり)墜落防止のためにフルハーネス型との併用が求められます。
フックの掛ける位置が低く、墜落時の衝撃が大きくなる場合
足元にフックを掛ける場合、フルハーネス型、および第二種ショックアブソーバが選ばれます。腰の高さ以上にフックを掛ける場合は第一種ショックアブソーバが選定されますが、低い位置にフックを掛ける作業が混在している場合、フルハーネス型、第二種ショックアブソーバの組み合わせが求められます。
フルハーネス(安全帯)の新・旧規格を見分ける方法
フルハーネス型の新規格・旧規格の違いを解説します。旧規格の2021年1月2日以降は販売されていませんが、古い安全帯を使用する場合は確認しましょう。
名称
旧名称は「安全帯」でしたが、新規格での「墜落制止用器具」となっています。なお、あくまで法律上の改称であり、現場での通称として「安全帯」を使用することは問題ありません。
種類
旧規格には、「胴ベルト型(一本つり)」「胴ベルト型(U字つり)」「ハーネス型」が種類として記載されていました。 新規格の種類表示は「フルハーネス型」「胴ベルト型」の2種類となっています。
使用可能質量
旧規格では、使用可能質量が85kgとなっていました。新規格では特注品を除き、100kgまたは85kgとなっています。
安全衛生特別教育の受講について

高さ2メートル以上の場所で、一定条件においてフルハーネス型墜落制止用器具を使用して作業をする作業者には、労働安全衛生法で定められた特別教育を実施する必要があります。墜落制止用器具の正しい使用方法や関連法令、労働災害の防止に関する知識を習得させることが、本教育の目的です。
- 作業に関する知識
- 墜落制止用器具に関する知識
- 労働災害の防止に関する知識
- 関係法令
- 墜落制止用器具の使用方法等(実技)
講習免除の条件例
以下の条件に当てはまる者は、一部科目について特別教育の受講を省略できます。
過去に特別教育または同等の教育を受けた者
改正前の「安全帯使用作業に関する特別教育」を受講している場合、あらためて特別教育を受講する必要はありません。「ロープ高所作業特別教育」「足場の組立て等特別教育」を受講している場合、「労働災害の防止に関する知識」の科目を省略できます。
一定の業務経験を持つ者
フルハーネス型を使用して6月以上作業した経験がある場合、「作業に関する知識」「墜落制止用器具に関する知識」「墜落制止用器具の使用方法等(実技)」の科目を省略できます。胴ベルト型を使用した6月以上の作業経験がある場合は、「作業に関する知識」の科目を省略可能です。 ただし、特別教育を省略可能な業務経験として認められるかどうかの最終的な判断は都道府県労働局・労働基準監督署によります。気になる場合は、問い合わせが必要です。
まとめ
高所での作業を適法に行うためには、新規格のフルハーネス型墜落制止用器具が必要です。単に法律の問題だけでなく、新しい規格の安全帯を導入することは、労働者を守り、労働災害を未然に防ぐことにつながります。現在、使用している安全帯が新規格に適合しているか確認し、必要に応じて新しい安全帯を導入しましょう。
ワークランドでは、新規格対応の安全帯を各種とり揃えております。高所作業を行っている場合は、ぜひ導入をご検討ください。