空調服・ファン付き作業着の効果は本当にある？涼しくなる仕組みや選ぶポイントも解説

2021/08/05（木）

コラム

空調服・ファン付き作業着とは、ブルゾンやベストに搭載された小型ファンが風を起こし、快適に過ごせる衣服です。涼しいだけでなく、作業効率アップや利益アップにつながる効果があります。この記事は、建築業の男性に向け、空調服・ファン付き作業着の効果について解説します。よくある質問や選ぶポイントなども解説しているため、参考にしてください。

空調服・ファン付き作業着とは

空調服・ファン付き作業着とは、エアコンが使えない現場や外での作業に適した服です。ここでは、涼しさの仕組みについて解説します。

空調服・ファン付き作業着の仕組み

空調服・ファン付き作業着とは、小型ファンが搭載され、風の力で涼しく過ごせる服です。空調服・ファン付き作業着は、生理クーラーのメカニズムを利用しています。生理クーラーとは、汗が気化熱で蒸発するときに、体温を下げるメカニズムのことです。空調服・ファン付き作業着は、衣類の中に風を通すことにより、汗を気化して体温を下げます。屋外やエアコンが使えない現場で快適に過ごせます。

空調服・ファン付き作業着の効果

空調服・ファン付き作業着の効果は、涼しさだけではありません。ここでは、空調服・ファン付き作業着がもたらす5つの効果を紹介します。

身体を冷やす

最大の効果は、身体を冷やすことで、生理クーラーを利用するため、エアコンのように身体を冷やしすぎません。身体が快適に感じる自然な暖かさを保てます。無駄な汗をかかずにすみ、体力の消耗を抑え、熱中症を防ぎます。汗がすぐに蒸発するため、汗臭が減って、汗疹などの皮膚病予防につながります。

作業効率を高める

休憩していた時間も作業できるようになると、作業効率が高まります。たとえば、真夏に重労働を行う場合や、高温の環境で作業をする場合は、一定の時間ごとに休憩を入れて身体を冷やさなければ、作業が続けられません。30分作業するごとに30分休憩が必要だった現場で、空調服・ファン付き作業着を導入して連続作業が可能になれば、作業効率が2倍になります。

利益改善につながる

作業効率が上がるほど、利益改善につながります。社員1人の人件費を月額50万円、空調服・ファン付き作業着を6～9月の4か月間、3年使う効果を試算しましょう。

人件費＝50万円×4か月×3年＝600万円

作業効率が10%向上した場合の利益改善＝600万円×10%＝60万円

このように、1人あたり3年間で60万円もの利益改善が見込めます。

エネルギーコストを削減する

エアコンよりもエネルギーを必要としないため、コストを削減できます。たとえば、1日8～10時間着用した場合、空調服・ファン付き作業着の1か月の電気代（充電式ニッケル水素乾電池）は20～50円です。毎日着用しても、かなり安価で使えることが魅力です。たとえば、24℃設定で作業していた現場が、空調服・ファン付き作業着のおかげで27℃でも快適になります。その結果、設備費用・電気費用の削減につながります。

地球温暖化対策に貢献する

夏場の電力消費の縮小は、地球温暖化対策の貢献につながります。空調服・ファン付き作業着は、温暖化対策のために発案されたもので、「平成29年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰」を受賞しています。空調服・ファン付き作業着が作業現場だけではなく社会全体に広がれば、発電設備の縮小、エネルギー問題やヒートアイランド対策に有効であると期待されています。

空調服・ファン付き作業着は本当に涼しいの？

実際に空調服・ファン付き作業着は、どのくらい涼しいのでしょうか。ここでは、冷却効果の検証結果と導入企業の事例について解説します。

サーモグラフィーでの検証

2020年6月に行われた高知農業改良普及所の効果検証により、冷却効果が期待できることがわかりました。ビニールハウス内での作業後に赤外線サーモグラフィーで撮影すると、空調服・ファン付き作業着を着用した人の表面温度が明らかに低くなっています。

※参考：空調服・ファン付き作業着（送風ファン付き作業服）の冷却効果について｜中央西農業振興センター高知農業改良普及所

導入した企業の事例

導入企業では、夏バテや体調不良の社員が減った、作業効率が上がったなど、多くの変化がみられました。たとえば建設業では、夏場の作業の集中力やクオリティの低下が改善できた、鋼鉄業などの製造業では、涼しく作業の邪魔にならないなど、よい評価がきかれます。そのほか、交通整理や駐車場の警備、野外イベントを主催する企業でも導入されています。

空調服・ファン付き作業着でよくある質問

空調服・ファン付き作業着が使いやすいかどうか、購入前に不安を解消しましょう。ここでは、よくある質問について解説します。

空調服・ファン付き作業着の重さは気になる？

ファンは軽量プラスチックで作られているため、服と合わせても重さはほとんど気になりません。重さがあるのはバッテリーで、メーカーによって異なりますが、300～500gほどです。小型バッテリーなら、スマートフォン1個分ほどの重さです。

バッテリーの持ち時間はどのくらい？

持ち時間は、バッテリーの出力により5～30時間と大きく異なります。容量（ｍAh）が大きいほど持ち時間が長くなるため、購入時に確認しましょう。1日も持たないバッテリーを使っている人の中には、午前中・午後でバッテリーを使い分ける人もいます。

空調服・ファン付き作業着の不便なところは？

姿勢によっては、バッテリーが身体に当たり、痛みを感じる場合があります。空調服・ファン付き作業着が不向きな現場も注意が必要です。ほこりや粉塵が多い現場では、ファンに不具合が起こりやすくなり、溶接作業では、前掛けがファンを覆ってしまうことがあります。

手入れする方法は？

ファンやバッテリー、ケーブルなどの電子機器をすべて取り外し、服のみを洗濯機で洗います。ファンにほこりが溜まると、涼しさが維持できなくなります。ファンは綿棒や柔らかい布を使って、定期的に手入れをしましょう。

インナーに着るものは？

空調服・ファン付き作業着のインナーには、多くの人がコンプレッションウェアや半袖Tシャツを着用します。より涼しさを感じたい場合は、吸汗速乾・接触冷感・消臭などの機能がついたコンプレッションウェアがおすすめです。

空調服・ファン付き作業着を選ぶポイント

空調服・ファン付き作業着を選ぶ際は、袖・サイズ・生地や素材の機能性に注目しましょう。ここでは、選ぶポイントを解説します。

袖のタイプ

ベスト、半袖、長袖の3つのタイプがあります。ベストは袖がなくて動きやすく、価格がリーズナブルです。半袖は袖があるため、取引先との打ち合わせでも、ジャケットのように着られます。安全面から長袖が義務付けられている現場では、長袖タイプを選びましょう。メリット・デメリットがあるため、現場に合わせて選ぶことをおすすめします。

サイズ

空気が流れるスペースが必要になるため、いつも着用している服よりも、ワンランク上のサイズを推奨します。ゆとりを持たせることで、風が通り、涼しさを感じやすくなります。普段Mサイズの人は、空調服・ファン付き作業着はLサイズがおすすめです。ファンを起動すると服がふくらむため、スタイリッシュに着たい場合は、ジャストサイズを選びましょう。

生地や素材の機能性

生地は、綿、ポリエステル、綿・ポリエステルの混紡などが利用されます。綿は着心地がよく、火花による穴が空きにくい素材です。ポリエステルは屋外での使用に適しており、綿よりもリーズナブルです。混紡の生地は、両者の長所を活かしています。機能は、UVカット、遮熱加工などがあるため、使うシーンに合わせて生地や機能に注目しましょう。