年々過酷になっていく夏の暑さ。屋外や、冷房を使用することができない屋内での仕事は、体力を消耗してしまいます。熱中症対策も兼ねて、近年さまざまな機能や性能を持つワークウエアが作られていますが、職種によっては着用が難しい場合も少なくありません。そこで今回は、さまざまな職種の方にも着用しやすい「水冷服」について紹介します。

新しい熱中症対策ウエア「水冷服」

水冷イメージ

「水冷服」と聞いても、いまいちピンとこない、という方も多いのではないでしょうか。聞き慣れないのは、「水冷服」が、ここ数年で登場したばかりの新しい熱中症対策ウエアだからです。以下から、水冷服の基礎知識をご紹介します。

水冷服・水冷ベストとは?

「水冷服」は、ベスト型になっており、インナーなど衣類の上に着用します。その名の通り「水」を利用することで身体を冷やしてくれる衣類のことです。しかし、衣類と「水」は、なかなか結びつきません。どのようにして、「水冷服」が身体を冷やしてくれるのか仕組みを解説します。

バッテリー搭載で水が循環

「水冷服」は、衣類内全体に水が通るチューブが通っています。小型のバッテリーを利用することで、チューブの中を水が循環していく仕組みです。

チューブは主に背中と胸、脇の下部分に通っています。とくに脇の下は太い血管が通っているため、脇の下の血管を冷やすことで効率的に身体を冷やせます。

チューブを通る水の循環スピードはコントローラーで段階的に調整が可能なため、冷え過ぎてしまうこともなく、好みの冷たさで快適に仕事に打ち込めます。

イメージとしては、流れる水で身体を冷やすような状態です。服の中でそれが常に行われるのが「水冷服」。従来の熱中症対策ウエアとは違い、“涼しい”より“冷たい”を実感できる新しいワークウエアです。

氷や保冷剤で冷たさがアップ

身体を循環する水は、「水冷服」の背面部分に位置するタンクに注ぎます。タンクの入り口は大きいため、氷や保冷剤を入れることが可能です。循環する氷水が直接身体を冷やしてくれるため、冷却効果は絶大です。

氷が溶けてしまっても、またタンクから氷を入れることで何度でも冷たさは復活します。自宅や仕事場で入れてきた氷が溶けて、冷たさが衰えてしまっても、コンビニなどで簡単に、かつ低価格で氷を手に入れられるのも便利なポイントです。また、タンク部分は、カバーで隠れており、一見すると水冷服というのがわからない作りになっているタイプの水冷服も存在します。

水の循環スピードを操作するコントローラーは、胸付近についているためその都度、取り出す必要がなく、簡単に操作が可能です。バッテリーは、ポケットに収納が可能なため、外から見えることはありません。

水冷服が選ばれる理由

水冷服が選ばれる理由

年々、酷くなっていく夏の暑さに従って、冷感インナーや、空調服といったさまざまな熱中症対策ウエアが近年、次々と発売されています。そんな中、「水冷服」は、登場したばかりにも関わらず、発売早々に完売した商品もあり、手に入れられなかった方もいるほど高い人気を誇ります。

なぜ今、「水冷服」が注目を集めているのでしょうか。その理由について解説していきます。

猛暑でも冷たさを実感

夏場は、30度を超えることも「異常気象」とは呼ばれなくなってきた昨今。連日の酷暑に体力を奪われた経験がある方も多いのではないでしょうか。

数時間の外出でも疲労が溜まってしまうほどの気温のなか、野外の現場仕事などで長時間外にいる職種の方々にとって、酷暑は重大な問題です。さらに、外気温があまりに高すぎたり、熱源の付近だったりする場合は、一般的な熱中症対策ウエアだけでは不十分となるケースも少なくありません。

一方で「水冷服」は、内側のチューブの中を氷水が循環することで身体を冷やします。そのため、外気温や高い湿度にも左右されることなく、涼しさを実感し、維持できます。

音が静か

バッテリーを使用するタイプのワークウエアは、音が気になるという方も多いでしょう。空調服のようにファンを稼働するワークウエアは、野外で使用する分には気になりませんが、室内で使用する際に音が気になるという方も少なくありません。

一方「水冷服」は、内蔵されているポンプが水を汲み上げ、チューブに水を循環させますが、その音は小さく、静かな場所でも気になりません。また、近年の節電の呼びかけにより、空調を控えているお店の中での着用時も「水冷服」は、音が静かなため問題なく使用可能です。

建物内での着用はもちろんですが、聴覚過敏などで音の大きさが気になる、という方にもおすすめのワークウエアです。

軽量

仕事で着用する作業用ウエアは、軽量であることが重要です。長時間身につける衣類が重さのあるものだと、仕事での疲労に加え、肩こりや頭痛なども誘発してしまいます。

「水冷服」に付属するバッテリーは、リチウムイオンバッテリーです。携帯電話のモバイルバッテリーなどに使われるものと同様のため、それほど重さが気になりません。

タンクの中に保冷剤を入れることのできるタイプ以外にも、内容量が大きく500mlのペットボトルが入れられるタイプの水冷服もあります。チューブの中を通る水は、少量のため、氷の量にもよりますが、実際に身につけたときの重さは、1キロ程度です。

「水冷服」は、軽量でありながら、身体を長時間冷やしてくれる夏の作業の味方です。

丸洗いできて衛生的

酷暑下での作業は、汗による臭いや汚れが気になるもの。その点、「水冷服」はバッテリーやポンプ、ケーブルを外せば、丸洗いできるので、清潔感を保てます。

汗はもちろんですが、作業の中でついてしまった粉塵などの汚れも気軽に洗えます。毎日、長時間身につけるものだからこそ清潔に使い続けることができるのは嬉しいポイントです。

また、水冷服に採用されている素材は、ポリエステルであることが多いです。ポリエステルは通気性がよく、乾きやすい特性を持ちます。汗を吸収しやすいだけではなく、丸洗いした後の「水冷服」も比較的乾きやすいため、毎日使うものでも洗いやすいのが魅力です。

空調服との違い

空調服との違い

近年、夏の定番として人気の高い「空調服」水冷服と同様にバッテリーを使用するワークウエアです。

「空調服」は、内蔵されている小型ファンが、空気を取り込み、汗の気化熱を利用して身体を冷やします。近年では、熱中症対策として多くの企業が空調服を導入しています。

以下からは、同じ熱中症対策ウエアである空調服と水冷服との違いについて解説します。

ベストタイプで使いやすい

現在では、さまざまな形も増えてきましたが、ジャケットタイプが主な形である「空調服」に対して、「水冷服」は、ベストタイプが主流です。

袖のないベストタイプは、腕の可動域が広くかさばらないため、作業の邪魔にならないのが嬉しいポイント。また、フリーサイズが多いため、さまざまな体型の方が着用できます。

なお、近年ベストタイプの空調服も多くなってきましたが、風を取り込むことで身体を冷やす空調服は、アウターとしての着用が基本です。制服の着用が義務付けられている職種の方々には着用が難しい問題がありました。

一方「水冷服」は、制服の下に着用することができるため、工事現場などで働く方々をはじめ、炎天下の下で働く方々の身体を冷やせます。制服や、作業服の下を氷水が循環するため、今までにない涼しさを実感できるでしょう。また、風の通り道を作るために、空調服が大きく膨らむことが気になる、という方にも「水冷服」がおすすめです。

空調服が使えない現場にも対応

「空調服」は、現場によって着用が難しいというデメリットがあります。

たとえば溶接所など、火気のある現場では、火の粉が風によって飛び散る危険性があるため、ファンを使う空調服の使用は難しくなります。火の粉がファンの中に入り込むことで、火傷や故障の恐れがあることも理由のひとつです。また、熱源の近くでの使用は、熱風を空調服内に取り込んでしまうことで、涼しく感じられません。他にも、塗装業や内装業はファンによって粉塵を巻き上げてしまうといった危険性も考えられます。

一方、「水冷服」は、タンク内の水を利用して身体を冷却するため、風によるデメリットがありません。軽量のため、身軽でありながらしっかり身体を冷却してくれます。

なお、「水冷服」は、夏のアクティビティやレジャースポーツにもおすすめです。

サイクリングやツーリング、登山やハイキングの際に着用することで、熱中症を防いでくれます。音が静かなことで気が散ることもなく、会話を楽しむこともできます。

組み合わせでさらに涼しく

「水冷服」の着用は、涼しく夏を過ごすのに最適です。ここからはさらに、「水冷服」と組み合わせて着用することでより涼しさを感じられるおすすめの組合せについてご紹介します。

水冷服×冷感インナー

水冷服の下に冷感インナーを着用することで冷却効果はさらに増加します。

冷感インナーは、その名の通り、触るとひんやりと冷たさを感じる素材で作られています。「接触冷感」と呼ばれるその素材は、高い熱伝導率により肌の熱を瞬時に生地に移動することで冷たさを感じる仕組みです。吸湿速乾性を持ち、汗をかいてもすぐに乾くため、じめじめとした不快感がありません。

また、消臭機能があるものも多く、汗の匂いが気になる方にもおすすめです。「水冷服」と組み合わせることで、さらに涼しさを体感できるおすすめの冷感インナーを3点、ご紹介します。

自重堂 [Z-DRAGON] 75174 ロングスリーブ

接触冷感素材とメッシュ素材を組み合わせた夏場に最適なインナー。ストレッチ素材で動きやすいのが特徴です。着丈が長いためしゃがんでも背中が出ることなく、現場仕事に最適。手首までのロングスリーブでケガや日焼けの防止にもなるでしょう。

速乾性に優れ、汗をかいてもサラサラで快適です。消臭と抗菌機能を併せ持ち、長時間の使用にも不快感を覚えることもありません。

サイズは、SS〜ELまでの6展開で、男女共に着用が可能です。カラーバリエーションは、ベーシックなホワイトとブラックに加え、カモフラージュ柄を合わせた全5色です。

[ロッキー] RC3902 長袖コンプレッション

おしゃれな作業服の定番「ROCKY」の冷感インナー。気化熱を利用した「冷感素材」を採用しています。接触冷感とは異なり、水分がある限り冷たさを維持する革新的な冷感インナーで、「-10度(体感温度)」を感じられます。

サイズは、S〜XLまでの4展開。色味は、ブラック、ホワイト、カーキ、グレーの4色。着る人を選ばないベーシックな色味で、着回しの良さも魅力です。

[GLADIATOR] G-928 ドライパワーサポート長袖

接触冷感かつ、吸汗速乾素材を採用した冷感インナー。汗が気になる脇部分は、メッシュ素材に加え、消臭テープを使用し、夏の野外作業に最適なインナーです。

サイズは、SS〜5Lまでの豊富な8展開。SS、Sサイズは、女性用シルエットです。色味は、定番のホワイト、ブラック、グレーに加え、ドット柄を合わせた全7色から選べます。

まとめ

今回は、新しい熱中症対策ウエア「水冷服」を紹介しました。ウエア内のチューブを氷水が循環することで、今までにない涼しさ、冷たさを感じられます。酷暑のなか、長時間の屋外作業のパフォーマンス維持に、快適な仕事環境を作り出せる「水冷服」がおすすめです。

作業着の専門店「ワークランド」では、「水冷服」を取り扱っています。「XEBEC(ジーベック)」の水冷服は、ユニセックスに対応したフリーサイズです。胸には、調節可能なアジャスターがついており、冷やす場所を変えられます。脇の下はメッシュ素材になっているため、蒸れにくいのもポイントのひとつ。

お仕事以外にも、夏のレジャーやツーリングなどで大活躍の新しい夏の定番ワークウエア「水冷服」。その革新的な冷たさを、ぜひ体感してください。

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